第二条 「苦難は幸福の門」

人が恐れきらっているのは苦難である。中でも病気、災難、貧苦・・・世に少しの苦しみもないという家はまことに少ない。必ず何か一つ、「これだけがかたづいたたら」と念じている「困ったことが」ある。これが今めでは「ただの困ったこと」であった。
昔の人達は苦難は悪魔のしわざだと見て、忌み嫌った。ある人は罪のあらわれだ、業の報いだ、仕方が無い、あきらめる外はないと考えた。(中略)

苦難は天からの試練である、耐え忍んで努力すれば、よい結果が来るとかんがえたからであろう。
しかし今や、百尺竿頭さらには一歩を進めて、苦難は、生活の不自然さ、心のゆがみの映った危険信号であり、ここに幸福に入る門があることがわかってきた。
これがはっきりわかれば、もう苦難を恐れきらうことがなくなる。いや、よろこんで苦難に立ち向かう。にっこり笑ってこれに取り組む。そして苦難の原因になっている生活のあやまり、心の不自然さを取り去ると、かつ然として幸福の天地が開けてくる。苦難の黒幕がひらかれた時、その奥には、明るい幸福の舞台が用意されているのである。(中略)

生命に生きぬくその門は、狭く、入りにくい、又苦しい、痛い、みにくい。それがひどければひどいだけ、しっかりと足をふみしめて、門のとびらを強くおし開こう。
にっこり笑って、エイと一声―かけ声勇ましく、かたい扉を押し開こう。その奥には光明、歓喜の世界がまっている。
苦難は幸福に入る狭い門である。